神戸製鋼所の素材系事業について
神戸製鋼所は1905年(明治38年)に創業した100年以上の歴史をもつ会社です。自動車や船舶、高層ビルなどの社会基盤を支える「鉄鋼材料」の他、飲料缶や自動車・航空機に用いられる「アルミ合金」、半導体や電子デバイス向けの「銅合金」、そして航空機や化学プラントに不可欠な「チタン」など、多様な金属材料を取り扱っている総合素材メーカーであり、これらの素材を「繋ぐ」技術である「溶接」事業においても国内トップメーカーとしての地位を確立しています。また、自動車用弁ばね用鋼や高張力鋼板(ハイテン)、溶接ソリューション(溶接ロボット+溶接材料+溶接プロセス)など、独自技術と総合力を活かした顧客価値の高い製品・ソリューションを提供している点が神戸製鋼所の特徴です。
現在は「カーボンニュートラルへの挑戦」を中期経営計画における最重要課題の一つに掲げ、素材系事業の自社プロセスから排出されるCO2の削減に積極的に取り組んでおります。最近では、石炭の替わりに天然ガスで鉄鉱石を還元した「直接還元鉄」を用いて、大型高炉から排出されるCO2を20%以上削減する技術の実証に成功しました。これは、商業スケールの大型高炉プロセスで実証された技術としては世界トップレベルのCO2削減量であり、国内外から注目を集めています。神戸製鋼所が世界中の高炉製鉄メーカーに先駆けて、このようなCO2削減技術を実現できたのは、当社のエンジニアリング事業部門が「直接還元鉄プラント」の世界トップシェアを保有していたことも寄与しており、素材系事業以外も手掛ける多角経営体制から生まれた発想といえます。
素材系事業で働く魅力
私自身は、神戸製鋼所に入社して20年以上、素材系事業に関わる研究開発に携わってきました。所属部署は「技術開発本部」、所謂コーポレートラボであり、いずれの事業部門にも属さない横断組織ですが、新技術の開発から実用化に至る過程で多くの素材系事業部門と交流してきました。長年の業務を通じて私が体感している神戸製鋼所の素材系事業の魅力は、まず「特長ある差別化製品」が成長戦略の柱であることです。社会とお客様の未来を洞察し、我々にしか提供できない価値は何かを突き詰め、それを高い技術で実現していく業務プロセスからは、大きな充実感が得られるものです。
もう一つの魅力は、グループとしての多様性です。既に述べたように、神戸製鋼所は、鉄鋼・アルミ・銅・チタンなど多くの素材を扱うメーカーでありながら、産業機械や大型プラント、発電事業まで手掛けている多角経営企業です。そして多角経営を通じてグループ内に蓄積された多様な事業経験・技術ノウハウ・専門人材こそが神戸製鋼所における最大の資産であり、この多様性を活かした他社には無い独自の製品・技術・サービスを提供し続けることを目指しています。新しいアイデアを思案する過程で、自部署にはない知見と触れる瞬間も多く、他社では得難い貴重な成長機会だと感じます。
例えば、高張力薄鋼板と高強度アルミ合金。いずれも自動車軽量化という顧客価値を通じて社会のCO2削減に貢献する金属素材ですが、当社以外の鋼材およびアルミ材の専業メーカーでも独自材料が開発されています。しかし当社は、その両方を手掛けている上に、「違う素材を繋ぐ技術」も保有しており、お客様に合わせた最適ソリューションの提供が可能です。
素材製造プロセスにおいても、自社工場で実証した独自の製鉄CO2削減ソリューションを、エンジニアリング事業を通じて世界中の製鉄メーカーに提供することを計画しており、自社プロセスから排出されるCO2の削減だけではなく、お客様のCO2削減にも貢献しようとしています。
このように、同業他社にはないユニークな事業体制を活かした、大きな社会貢献ができる神戸製鋼所の素材系事業に私自身も愛着と誇りを感じています。